日本のリユース業界が挑む海外進出の今と未来
2025.04.27

日本のリユース業界では、国内の利用者が増える一方で、海外への展開も広がりを見せています。アジア、アメリカ、ヨーロッパなど、地域によって異なるリユース品のニーズに応える形で、さまざまな戦略が取られています。
本記事では、日本のリユース品が海外で注目される背景や、企業・個人がどのように海外販売を実現しているのかを、わかりやすくご紹介します。
なぜ日本のリユース品は海外で人気なのか?
日本のリユース品は、東南アジアや欧米をはじめとするさまざまな地域で、近年ますます注目を集めています。その背景には、日本製品の丁寧なつくりや、状態の良さ、手頃な価格に加え、日本独自のカルチャーが持つ魅力があると考えられます。
海外では単なる中古品ではなく、「質の高いリユース品」として受け入れられていることが特徴です。こうした需要の高まりは、海外販路を開拓したい企業や、バイヤー職への転職を目指す方にとって、大きな可能性を秘めたチャンスとなっています。
日本製品の品質が評価されているのはなぜ?
日本のリユース品が海外で高く評価されている背景には、「品質の高さ」があります。特に海外では、「日本製=信頼できる高品質」というイメージが広く浸透しており、中古品であっても安心して購入される傾向があります。
それでは、具体的にどのようなポイントが海外の利用者から支持されているのでしょうか。
中古でも高品質な状態が保たれている
日本では、家電や衣類、家具などが丁寧に使われているため、中古であっても状態の良い商品が多く出回っています。特に都市部では、引っ越しや買い替えのタイミングで手放されるケースが多く、まだ十分に使用可能なアイテムが多く見られます。
さらに、買取業者による点検やクリーニングといったメンテナンスが徹底されており、海外の販売先でもそのまま店頭に並べられるレベルの品質が保たれています。たとえば、東京都内の中古家電ショップでは、海外輸出を前提に日本製品を仕入れる業者が定期的に来店している例もあります。
こうした「高品質な中古品」は、輸入後のトラブルや返品リスクを抑える要素にもなり、海外市場での販売競争力を高める大きな強みとされています。
丁寧に扱う日本人の消費文化が背景にある
日本人には「モノを大切にする」文化が根づいています。使い始めた日から丁寧に扱い、定期的に手入れをしながら使うことが習慣になっている人も多いため、数年使用した商品でも見た目や機能に大きな劣化がないままリユース市場に流通しています。
また、日本では取扱説明書や付属品、外箱をきちんと保管する人が多く、これも海外バイヤーにとっては大きな価値となります。とくにブランド品や精密機器などは、こうした付属品の有無が再販価格に直結するため、「日本から仕入れたい」と考える理由の一つとなっています。
このように、日々の暮らしにおける日本人の細やかな配慮や丁寧さが、海外からの信頼と評価にしっかりと結びついているのです。
価格面での魅力はある?
日本のリユース品が海外で人気を集めている大きな理由の一つは、「価格の魅力」にあります。近年の円安の影響もあり、品質の高い日本製中古品がこれまで以上に手頃な価格で提供されるようになっています。
高品質で状態の良い商品が、現地価格よりも安く手に入るケースも少なくありません。こうした背景が、企業や個人にとって海外展開の大きな追い風となっています。ここでは、価格面での具体的なメリットを見ていきます。
新品に比べて割安な価格で手に入るため
海外では、日本のリユース品を新品の代わりとして選ぶ消費者が少なくありません。とくに日本製の家電やカメラなどは、もともとの品質が高いため、数年使用された商品でも長く使えることが多く、「中古でも安心して使える」という評価につながっています。その上、新品と比べて大幅に価格が抑えられていることから、単なる節約というより「価値ある買い物」として支持を集めています。
東南アジアでは、日本製の中古家電やカメラが「価格と品質のバランス」に優れている点から、現地の消費者や小売業者の間で安定した人気を誇っています。とくにタイでは、「ユーズド・イン・ジャパン」という言葉自体が一種のブランドとして受け入れられており、日本製リユース品を扱う専門店の数も年々増加傾向にあります。
価格が手頃であるだけでなく、丁寧なつくりや高い耐久性、清潔感のあるコンディションが評価されており、現地では安いから選ばれるのではなく、信頼できるから選ばれる存在となっています。
また、マレーシアでは省エネ性能に優れた冷蔵庫や洗濯機といった白物家電や、コンパクトなキッチン家電に安定した需要があり、日本のリユース品が着実に市場に浸透しています。こうした動きは今後も広がりを見せ、リユース業界の国際的な成長を後押しすると考えられます。
輸入関税などを含めてもお得感がある
日本から商品を輸出する際には、送料や関税がかかる場合もありますが、それらを含めても総コストが新品より安く済むことが多いのが、リユース品の大きな強みです。とくに海外では、日本で数年使用された商品でもまだ十分に使えると見なされるため、「少し古いが状態の良い商品」は、現地の市場で好意的に受け入れられています。
さらに近年は円安傾向が続いていることもあり、海外の通貨で見ると日本製品はより割安に感じられるようになっています。実際、タイやフィリピンなどでは、日本の中古家電やアパレルが積極的に輸入されており、現地のリユースショップで定番商品として並んでいます。こうした動きは、輸入バイヤーや現地ディーラーの間でも広がっており、コスト以上の「価値」を提供できる商材として、日本のリユース品への注目が高まっています。
アニメやゲームなどのカルチャーが影響している?
リユース品の中でも、日本ならではのコンテンツに関連する商品は、海外で高い人気を集めています。アニメやゲーム、アイドル文化など、日本のサブカルチャーはそれ自体が一つの“ブランド”として受け入れられており、中古品であっても価値が下がりにくいのが特徴です。こうした文化的な背景が、海外での安定した需要を支えている理由について、ここで詳しく見ていきます。
日本独自のコンテンツが根強い人気を持つ
日本のアニメ関連商品は、近年ますます世界市場での存在感を高めています。
2023年にはアニメ市場全体が3兆円を突破し、そのうち海外売上が過半数を占めるという快挙を達成しました。特に中国や北米、東南アジアを中心にファン層が拡大しており、限定フィギュアやコレクターズグッズなど、日本から輸出されるリユース品の需要も高まっています。
こうした背景には、日本のアニメやゲームが単なるエンターテインメントにとどまらず、「投資価値のある文化資産」として世界的な評価を受けている現実があります。コレクター市場では、中古であっても保存状態が良ければ高額で取引されるケースも多く、リユースビジネスにとっては安定した需要が見込める分野といえます。
出典:一般社団法人 日本動画協会「アニメ産業レポート2023」
コレクター需要による安定した市場が存在
アニメやゲームなど、日本のサブカルチャーに関連するリユース品は、海外でも長く人気を保っています。こうした商品は「ただの中古グッズ」ではなく、ファンやコレクターにとっては“手に入れておきたい価値あるアイテム”として見られており、販売終了後も需要が途切れにくいのが特徴です。
たとえば、フィギュアや限定版グッズなどは、発売から数年経っても中古市場で高値がつくことがあります。これは一時的な流行に左右されるのではなく、作品やキャラクターそのものに根強いファンがいるためで、海外のリユース市場でも安定した人気を維持しています。
このような背景から、日本のカルチャーリユース品は「趣味」としてだけでなく、「将来的に価値が上がるかもしれない投資アイテム」としても注目されています。輸出ビジネスや越境EC、バイヤー職に関心のある方にとっても、商品知識や目利きの力を活かせる、将来性のある分野となっています。
日本と海外ではリユースへの意識がどう違う?
リユース市場が世界的に広がるなかで、日本と海外とでは、中古品に対する考え方や選び方に違いがあります。日本では「なるべく新品を選びたい」と考える人が多い一方で、欧米やシンガポール、香港といった地域では、環境への意識や価値観の多様化を背景に、リユースを前向きに取り入れる文化が根づいています。
こうした意識の違いを知っておくことは、今後海外に販路を広げたい企業はもちろん、輸出ビジネスやバイヤー職を目指す方にとっても大切な視点になります。地域ごとに好まれる商品や販売スタイルは異なるため、現地の消費者ニーズや市場の特徴を理解することで、より実践的で効果的なアプローチにつなげやすくなります。
日本はなぜ新品志向が根強いのか?
日本では「新品のほうが安心」と考える人がまだ多く、中古品に対して少し抵抗を感じる傾向があります。見た目のきれいさや清潔さ、使い心地へのこだわりが強く、リユース品に対して慎重な目を向ける人も少なくありません。
こうした意識は、日本ならではの文化や価値観とも深く関わっています。背景をしっかり理解しておくことで、リユース品の魅力をどう伝えるか、どんな工夫が求められるかといった視点にもつながり、今後のビジネス展開や海外販売戦略を考えるうえで大きなヒントになります。
「中古=劣るもの」という価値観が残っている
日本では、未使用であることや新品に近い状態が好まれる傾向があります。中古品については、誰かが使ったという印象や、品質への不安から、購入をためらう方も少なくありません。とくに家電や衣類、家具など、日常的に使うものは慎重に選ばれることが多く、こうした価値観がリユース市場の広がり方にも影響を与えていると考えられます。
このような価値観は、リユース市場の成長スピードに影響を及ぼす要因の一つとなっており、企業やバイヤーが中古品の魅力をどう伝えるかが今後の課題にもなっています。
ギフト文化や社会的なイメージが影響
日本では、贈り物には新品を選ぶのが一般的とされる風習があり、見た目や状態のきれいさが重視される傾向があります。お祝いごとや感謝の気持ちを伝える場面では、とくにその傾向が強く、中古品は選択肢に入りにくいこともあります。また、中古品を使うことに対して「経済的に余裕がない」といった印象を持たれることもあり、こうしたイメージがリユースに対する抵抗感につながっている側面も見られます。
海外ではどのようにリユースが受け入れられている?
一方、海外ではリユース品を積極的に活用する文化が根付いています。こうしたリユースに対する前向きな意識は、環境への関心が高まり始めた1970年代頃から少しずつ広がってきました。また、周りと同じではなく「自分だけのファッションを楽しみたい」と考える人が多いことも、ユーズドアイテムが人気を集める理由の一つです。
近年ではサステナブルなライフスタイルが注目されていることもあり、リユースは「環境にやさしい」「賢い買い物」として、多くの人に支持されています。
このように、海外では中古品に対して抵抗が少なく、自分のスタイルや価値観に合ったアイテムを楽しむ手段として、リユースが日常に溶け込んでいるのです。
サステナブル志向の高まり
近年、欧米諸国を中心に「環境にやさしい選択をする」という意識が広まり、リユースへの関心も高まっています。特に若い世代を中心に「使えるものは長く使いたい」「ゴミをできるだけ出したくない」といった考え方が定着しつつあり、中古品を選ぶことが“エコで賢い選択”として前向きに受け止められています。
とくにZ世代やミレニアル世代では、商品の価格やブランドだけでなく「環境への配慮」や「持続可能な社会への貢献」といった視点を大切にする傾向が強く見られます。こうした価値観は消費行動にも反映されており、古着やリユース雑貨、家電などをあえて選ぶ人が増えてきました。実際に欧州連合(EU)では、循環型経済を推進する政策が整備され、リユースを含む二次流通の支援が強化されていることも、市場成長の追い風となっています。
このようなサステナブル志向の広がりは、リユース業界で働く方や越境ECなどに挑戦したい方にとっても、今後の事業展開を考えるうえで欠かせない視点となっています。
一点物やヴィンテージとしての価値を重視する傾向
アメリカやヨーロッパでは、リユース品に“唯一無二の個性”を求める文化が根づいています。とくにヴィンテージアイテムや昔の限定品には、その時代ならではのデザインや背景があり、単なる中古品ではなく「ストーリーを持つモノ」として楽しまれています。
こうした地域では、商品の状態や使用歴よりも、デザインの独自性や生産数の少なさなどが重視される傾向にあります。そのため、日本製の丁寧に保管された中古品や、高品質なリユース商品は、海外でも非常に評価が高いのが特徴です。
さらに、環境配慮だけでなく「自分らしいスタイルを大切にしたい」というファッション感覚とも結びつき、古着やリユース雑貨を積極的に取り入れる人が年々増えています。日本ではあまり見られないような、「中古の贈り物」を選ぶ文化も一部に存在しており、こうした多様な価値観に触れることは、海外市場での販売や仕入れに関わるうえでも貴重な経験になります。
どうやって海外販売を実現しているの?
海外でのリユース品の需要が高まる中で、日本国内の企業だけでなく、個人でも海外販売に挑戦する動きが広がっています。ここでは、実際に海外での販路を確立している企業の事例と、個人バイヤーによる越境ECの活用方法についてご紹介します。
企業による海外展開の取り組み
近年、日本のリユース業界では、海外への展開に取り組む企業が増えています。中小規模の事業者から大手まで、さまざまな形で国際的な販路を広げる動きが見られます。
今回はその中から、海外展開を積極的に進めている代表的な企業として、コメ兵ホールディングスとブックオフグループの取り組みをご紹介します。
コメ兵ホールディングスの海外戦略
ブランド品や高級時計を扱うコメ兵ホールディングス(ブランドオフ)は、海外市場への展開を積極的に進めており、2024年時点で香港・台湾・シンガポールなどアジアを中心に21店舗を展開しています。
それぞれの地域に合わせた商品構成や、現地の文化に寄り添った接客を通じて、幅広い顧客層に支持を広げています。2024年には、香港・銅鑼湾に「BRAND OFF Causeway Bay Kai Chiu Road店」を開設し、富裕層を中心にブランドの魅力を発信する拠点として注目を集めました。
加えて、同社では越境ECの取り組みも進んでおり、自社ECサイトに加え、TmallやMIKE MUSEUMなどの海外向けプラットフォームを活用し、デジタルを活用したグローバル展開も本格化しています。真贋鑑定や商品管理といった日本国内で培った強みを活かし、海外の消費者にも安心してリユース品を届けられる体制が整っています。
さらに、EC分野に強みを持つ企業とのM&A(企業買収)も積極的に行い、販売チャネルの拡大とともに、より柔軟で持続可能なビジネス基盤の構築が進められています。
ブックオフグループのグローバル展開
ブックオフグループも、リユース市場の広がりを見据えて、海外での事業展開に力を入れています。
アメリカでは、ニューヨークやロサンゼルスなどの主要都市を中心に16店舗を展開しており、日本の中古本やゲーム、ホビー商品を、現地の生活者へ向けて販売しています。加えて、マレーシアやカザフスタンでは「Jalan Jalan Japan」ブランドで出店を進めており、日本の中古品に対する信頼と関心が各地で高まりつつあります。
また、越境ECの分野では、eBayの出店を通じて、海外の個人ユーザーに向けた販売チャネルを拡充しています。出品から翻訳、配送に至るまでを一括で対応できる体制が整えられており、日本国内の商品をスムーズに海外へ届ける仕組みが構築されています。
このように、リアル店舗とデジタル販売の両面から海外ニーズに応えることで、ブックオフは日本のリユース品の魅力を世界へ着実に伝えています。
個人バイヤーによる越境ECの活用
企業の海外展開が進む一方で、個人でも海外に向けた販売に取り組む方が増えています。特に、eBayやShopeeなどを活用した越境ECは、身近なスキルやアイデアを活かして始められる手段として注目されています。
ここでは、個人で商品を仕入れて海外へ販売する「越境バイヤー」という働き方に焦点を当て、その始め方や活用できるサポートサービスについてご紹介します。
越境バイヤーという新しい働き方
最近では、企業だけでなく、個人が海外に向けて商品を販売する「越境バイヤー」という働き方も注目されています。特に、eBayやShopeeなどの海外マーケットプレイスは、初期費用を抑えて始められるため、未経験の方でも挑戦しやすい点が魅力です。
たとえば、日本国内で人気のアニメグッズや中古ブランド品などを仕入れ、海外のユーザー向けに出品する方法があります。こうした商品は、日本ならではの品質や保存状態が評価されており、海外でも安定したニーズがあります。
サポートを活用すれば安心して始められる
言語や発送の手続きに不安を感じる方に向けては、越境販売を支援するサービスが整ってきました。代表的なものに、Buyee(バイイー)やZENMARKETといった海外発送代行サービスがあり、翻訳・出品・決済・配送・カスタマー対応までを一括で任せることができます。
さらに、BEENOSグループのBeeCruiseでは、販路の拡大やリピーター獲得の支援など、越境ECに特化したサポートを提供しています。あわせて、eBayでは出品ガイドやオンラインセミナーも定期的に行われており、少しずつステップアップしながら学んでいける体制が整っています。
こうした仕組みを活用することで、自宅で完結する副業や、新しいキャリアのきっかけとしても越境バイヤーは広がりを見せています。今後は、さらに柔軟な働き方の一つとして、関心を持つ方が増えていくと考えられます。
海外にも広がるリユースの可能性と、あなたの新しい選択肢

リユース品を環境にやさしい選択肢として取り入れる文化は、すでに世界各地に広がっています。なかでも日本の中古品は、丁寧に扱われていることや品質の高さから、アジアや欧米を中心に安定した人気があります。
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