バイヤーの将来性は?今後の需要とキャリアの展望
2025.03.13

バイヤーという職業は、商品の仕入れや価格交渉、市場分析を通じて企業の成長に大きく貢献する重要な役割を担っています。しかし、AI技術の進化やEC市場※の拡大により、バイヤーの仕事は確実に変わりつつあります。特にリユース業界では、ブランド品の査定や海外市場への対応など、新たなスキルが求められるようになっています。この記事では、バイヤーの将来性について、今後の需要、成長分野、キャリアパスを中心に詳しくお伝えしていきます。
※EC市場:インターネットを通じて商品やサービスを売買する市場で、オンラインショップやマーケットプレイス(例:Amazon、楽天)を通じて取引が行われます。
目次
バイヤーの現状と業界ごとの需要
バイヤーは、企業にとって必要不可欠な存在であり、業界によって求められるスキルや役割は異なります。消費者のニーズが日々変化する中で、適切な商品を選定し、利益を生み出すことがバイヤーの使命です。
近年では、EC市場やリユース業界の成長が著しく、デジタル技術を活用した仕入れが重要になってきています。また、海外調達の機会が増える中で、為替の変動や物流の遅れといったリスクにも対応する力が求められるようになっています。今後もバイヤーの役割は、さらに広がり、多様化していくことが予想されます。
近年はオンライン販売を意識したバイヤーの役割が増加
バイヤーの仕事は、市場のトレンドを調査し、商品を選び、価格交渉を行い、販売計画を立てるなど多岐にわたります。以前は、百貨店やアパレルブランドでの店舗販売を前提とした仕入れが主流でしたが、EC市場の拡大により、オンライン販売向けの商品選びが重要になっています。
ネットショップが主流となりつつある現在、データを活用して売れる商品を見極めるスキルが求められています。これまでは経験や勘に頼る部分も多かったですが、今では市場データや購買傾向を分析することで、より効率的な仕入れが可能になっています。
また、リユース市場の拡大に伴い、中古品の査定や真贋※を見極める知識を持つバイヤーが注目されています。フリマアプリやリユースショップが増えている中で、ブランド品や家電、家具などの仕入れには、正確な価格判断や品質チェックが欠かせません。特に、高級ブランド品の偽物が増えているため、専門知識を活かすバイヤーの活躍の場が広がっています。
さらに、海外からの仕入れが増えていることで、輸入品の価格変動や物流のトラブルに対応できるバイヤーも求められています。コロナ禍以降、国際物流が不安定になり、計画的な仕入れやコスト管理がますます重要になっています。
※真贋:商品が本物か偽物かを判断することです。特に高級ブランド品や限定品では、真贋の確認が重要であり、専門知識や経験を基に行われます。
業界別のバイヤーの需要
各業界でのバイヤーの役割は変化しており、それぞれの分野で求められるスキルも異なります。
アパレル業界
アパレル業界のバイヤーは、流行を素早くキャッチし、ブランドのイメージやターゲット層にぴったり合った商品を選ぶ能力が求められます。特に、シーズンごとに変わるトレンドを見極め、人気が出るアイテムをタイミングよく仕入れることが大切です。
最近では、エシカルファッション※やサステナブル素材※を使った商品への関心が高まり、環境に配慮したアイテムの仕入れが増えています。例えば、動物由来の素材を使わず、オーガニック素材や再生可能な材料を取り入れたアイテムや、フェアトレードを推進し、オーガニックコットンを使用した商品が増えています。さらに、EC市場が主流となり、SNSやインフルエンサーの影響を考慮した商品選びが重要になっています。こうした新しい流れをしっかりと把握し、柔軟に対応できるバイヤーの力が今後ますます求められます。
※エシカルファッション:環境や社会に配慮した方法で生産された衣料やアクセサリーを指します。
※サステナブル素材:環境に配慮した方法で生産された素材のことです。これには、再生可能な資源や、環境負荷を最小限に抑えた製造過程を経た素材が含まれます。
リユース業界
2025年にはリユース業界の市場規模が3兆2,500億円に達すると見込まれています。この成長に伴い、リユース業界のバイヤーには、ブランド品や家電、家具など、さまざまな中古商品の価値を正確に見極めるスキルが求められます。市場価格を把握し、適正な価格で仕入れる能力は必須です。特に、ブランドバッグや腕時計などの真贋を見極める知識は非常に重要です。
最近では、海外向けの販売も増えており、そのため、越境ECに関する知識を持つバイヤーの需要が高まっています。また、サステナビリティへの意識が高まる中で、リユース商品を活用した新たなビジネスモデルが登場し、業界全体が活気づいています。
出典:環境省
EC市場全般
EC市場の拡大に伴い、データを活用できるバイヤーの需要が急速に増えています。以前は、経験や勘に頼って仕入れを行うことが一般的でしたが、現在ではデータ分析ツールを活用し、消費者の購買傾向を基にした仕入れが主流となっています。
特に、Google AnalyticsやBIツール※を駆使して売れ筋商品を予測するスキルが求められています。また、SNSを活用したマーケティングが一般的になっているため、インフルエンサーとのコラボやD2C※ブランドのトレンドを意識した仕入れも重要です。EC市場では、バイヤーが単なる仕入れ担当にとどまらず、販売戦略にも関わるケースが増えており、デジタルマーケティングの知識を持つ人材が強く求められています。
※BIツール:企業が蓄積したデータを分析し、意思決定に役立つ情報を提供するソフトウェアです。
※D2C:製造業者が中間業者を通さず、直接消費者に商品を販売するビジネスモデルです。
バイヤーの将来性
バイヤーの仕事には、これからも安定した需要があると考えられています。しかし、AIやデジタル技術の進化、EC市場の拡大により、これまでの仕事の進め方は大きく変わる可能性があります。特に、データを活用した仕入れが標準となり、海外市場を視野に入れたグローバルバイヤーの活躍の場が広がっています。
経験や勘に頼った仕入れから、データに基づく戦略的な仕入れへとシフトしつつある今、バイヤーにはさらに高度なスキルが求められています。また、消費者の価値観が変化する中で、サステナブルな商品やリユース品への関心が高まり、バイヤーの役割もますます多様化しています。
今後はAIと人間のバイヤーが協力する時代に
AIやデジタル技術の進化により、バイヤーの仕事の進め方は大きく変わりつつあります。特に、AIを活用した市場分析や在庫管理が進化し、過去の販売データを基に需要を予測できるようになりました。これにより、これまでバイヤーが経験や勘に頼っていた部分が、データをもとにした判断へと移行しています。
AIは膨大なデータを分析し、「どんな商品が売れそうか」「最適な仕入れタイミングはいつか」といった情報を提供してくれます。しかし、商品の質感やブランドの魅力、トレンドに隠れた文化的背景など、AIでは捉えきれない部分も多く、人間のバイヤーが持つ感覚や経験が大切な場面もまだまだあります。今後は、AIがデータ分析を行い、それをもとに人間のバイヤーが最終的な判断を下す形で、AIと人間が協力して仕入れを行うスタイルが主流になると考えられます。また、仕入れ先との交渉や契約に自動化ツールが導入され、業務効率が向上することで、バイヤーはより戦略的な仕事に集中できるようになると考えられます。
EC市場の拡大とグローバルバイヤーの増加
EC市場の成長に伴い、バイヤーの仕事も大きく変化しています。特に、ネット販売専用の商品を仕入れるバイヤーの需要が増えており、データ分析やデジタルマーケティングの知識が求められるようになっています。
ECバイヤーは、販売データを分析し、「どの商品が売れるか」を予測しながら、適切なタイミングで仕入れを行う必要があります。また、SNSの影響力が増す中で、インフルエンサーとのコラボ商品や話題性のある商品の選定も重要なポイントとなります。
さらに、越境EC※の広がりにより、海外からの直接仕入れを行うバイヤーも増えてきています。海外のブランドやメーカーとやり取りするためには、英語や貿易に関する知識が必要で、為替や関税について理解しておくことも大切です。最近では、日本の商品が海外で注目されることも増えており、海外市場向けに仕入れを行うバイヤーの活躍の場が広がっています。
これからの時代、EC市場の成長とともに、データを駆使できるバイヤーや、海外市場に精通したバイヤーの価値がますます高まっていきます。
※越境EC:国境を越えて商品をオンラインで販売する取引のことです。
リユース業界でのバイヤーの役割が広がる
近年、リユース市場が急成長しており、バイヤーの役割もより重要になっています。特に、高級ブランド品や腕時計、中古家電などの需要が高まり、査定スキルや真贋鑑定の知識が求められる場面が増えています。
フリマアプリやリユース専門店の増加により、消費者が手軽に中古品を売買できるようになりましたが、それと同時に「正しく査定してもらえるか」という信頼性の問題も出てきています。そのため、AIを使った自動査定の技術が進化し、バイヤーの業務が効率化される一方で、最終的な判断を行うのは依然として経験豊かなバイヤーです。特に、限定品やヴィンテージ品など、単純にデータでは判断できない商品には、専門知識を持つバイヤーの見極めが欠かせません。
また、環境意識の高まりとともに、「長く使えるものを選ぶ」「リユース品を積極的に活用する」という消費者の意識が変化しています。リユース市場は今後も成長を続け、企業もサステナブルなビジネスモデルに力を入れています。これにより、リユースバイヤーの活躍の場がさらに広がります。
バイヤーのキャリアパスと将来性
バイヤーの仕事は、経験を積むことでさまざまなキャリアの選択肢が広がります。企業内で昇進を目指す道もあれば、独立して自分のビジネスを立ち上げることも可能です。
社内でキャリアアップを目指す場合、バイヤーの経験を活かしてマーチャンダイザー(MD)や商品企画の仕事にステップアップすることが多いです。また、海外ブランドとの取引経験を持つことで、グローバルバイヤーとしてさらに活躍の場を広げることができます。
一方で、データ分析やマーケティングのスキルを磨くことで、ECバイヤーやリユース市場の専門バイヤーとしても活躍できるようになります。特に、EC市場が成長している中で、オンラインの購買データを活用した戦略的な仕入れができる人材の需要は高まっています。ます。
バイヤーは、時代の変化に合わせてスキルを磨き、柔軟に対応することで長く活躍できる仕事です。市場の動向をしっかりと見極め、新しいチャンスをつかむことが、これからのバイヤーにとって大切な姿勢となります。
まとめ
バイヤーの仕事は、業界の変化とともに進化し続けています。企業内でキャリアアップを目指す道はもちろん、ECやリユース市場の拡大により、デジタル活用や専門知識を持つバイヤーの活躍の場が広がっています。さらに、独立して自分のビジネスを展開することもでき、多様な働き方が可能です。将来を見据えながらスキルを磨き、市場の変化に柔軟に対応することで、バイヤーとしてのキャリアをさらに発展させていきましょう。