ブランド品や貴金属の真贋を見極めるブランド鑑定士は、リユース業界で重要な役割を担う存在です。
環境省の報告によると、2023年のリユース市場規模は3兆1,227億円に達し、2030年には約4兆円に拡大すると予測されています。安定した成長が見込まれる将来性の高い分野であり、こうした市場拡大を背景にブランド鑑定士を必要とする企業も年々増えています。

本記事では、ブランド鑑定士への転職を考えている方に向けて、未経験から挑戦する方法や、必要なスキル、資格、年収相場、求人の探し方まで幅広く紹介します。
リユース業界ならではの視点で、デジタル技術の活用や市場の動向にも触れながら、ブランド鑑定士としてのキャリアを築くためのヒントをお届けします。

出典：環境省『循環経済の推進に向けた取組』

ブランド鑑定士への転職方法は？

ブランド鑑定士への転職を目指す場合、リユースショップや中古ブランド品を扱うEC企業への応募が主なルートとなります。
業界経験や専門資格がなくても、未経験者向けの研修制度を整えている企業が増えているため、挑戦しやすい環境が広がっています。

最近では、ラグジュアリーブランドの中古市場が世界的に拡大しており、鑑定士のニーズは急速に高まっています。
リユース業界では、大手企業だけでなく、成長中の中小企業でも新たな人材を積極的に採用しているのが特徴です。たとえば、大手リユースショップでは、入社後すぐに座学研修を行い、ブランドの特徴や査定方法を基礎から学べる仕組みを取り入れています。
これにより、異業種からの転職でも安心してスタートできる体制が整っています。

未経験から挑戦できる？

未経験からでも、ブランド鑑定士に挑戦することは十分可能です。
実際、多くの企業では接客や販売の経験を評価し、人物重視で採用を行っています。

入社後は、ブランド知識や鑑定スキルを実務を通じて身につけられるため、異業種からのキャリアチェンジを目指す方にも現実的な選択肢となっています。
例えば、アパレル販売やジュエリーショップでの接客経験を持つ方が、ブランド鑑定士に転身して活躍しているケースも多く見られます。

スタート時に専門知識がなくても、丁寧な研修と現場経験を積み重ねることで、確かなスキルを身につけていくことができます。

必要なスキルと求められる適性

ブランド鑑定士に求められるのは、真贋を見抜くための鋭い観察力と、細かな違いにも気づく注意力です。
また、商品知識だけでなく、査定や接客の場面で信頼感を与えるためのコミュニケーション力も欠かせません。

市場のトレンドや価格変動に敏感であることも大切な資質のひとつです。
人気ブランドの新作情報をいち早くキャッチしたり、偽物に見られる新しい特徴を把握することが、日々の業務にも直結します。

一つ一つの経験を積み重ねながら、専門性を磨いていくことで、着実に鑑定士としての実力を高めることができます。

ブランド鑑定士とは？仕事内容や資格を解説

未経験者向けの研修制度を提供する企業

大手リユース企業では、未経験者でも安心してスタートできるように、充実した研修制度を整えています。
ブランド知識や鑑定の基礎から、接客対応までを一から丁寧に学べるため、専門的な経験がない方でもしっかりと成長できる環境が用意されています。

座学でブランドの特徴や素材について学んだあと、店舗や査定センターで実際の商品に触れながら実践的なスキルを習得する流れが一般的です。
研修後も、先輩鑑定士によるOJTが行われ、日々の業務の中でフィードバックを受けながらスキルアップしていくことができます。

未経験からスタートし、数年後にはリーダーや教育担当として後輩を指導するポジションに就くケースも多く、キャリアパスも描きやすいのが特徴です。

現場でスキルを磨くためのポイント

現場でスキルを磨くためには、日々の査定業務を通じて、さまざまな商品に触れることが欠かせません。

また、先輩鑑定士からのアドバイスやフィードバックを積極的に受け入れる姿勢も重要です。
たとえば、査定後に行われるレビューの場では、自分では気づけなかったポイントを教えてもらえることがあります。
一つひとつを素直に吸収し、自ら学びを深めていく姿勢が、確かな成長につながります。

さらに、トレンドや偽物情報のアップデートも欠かさず行いましょう。
たとえば、人気ブランドの新作が出た際には、デザインや素材の特徴を事前にチェックしておくと、現場での対応力が格段に高まります。

実践と学習を積み重ねることで、自信を持って鑑定に臨める力が身についていきます。

転職に役立つ資格はある？

ブランド鑑定士になるうえで、資格は必須ではありませんが、知識や意欲のアピールとして役立つ場面があります。
特にブランドや宝石、時計に関する専門知識を証明できる資格は、採用の際にプラス評価につながることがあります。

現場では、資格の有無よりも実務経験が重視される傾向はありますが、一定の学習を経て得た知識は、自信にもつながります。
鑑定士としてのスキルを体系的に深めたい方や、未経験からの転職に安心材料がほしい方にとって、資格取得は良い選択肢になります。

リユース検定

リユース検定は、中古品を扱う現場で役立つ基本知識や実務理解を問う民間資格です。
ブランド品だけでなく、家電、ホビー、家具、アパレルなど、幅広いジャンルに対応した内容になっており、リユース業界全体の理解を深めるうえで活用されています。

初級から上級まで段階が分かれているため、自分のレベルに合わせてステップアップしやすいのも特長です。
実際にこの検定をきっかけに鑑定士を目指した方や、現場での説得力を高めたいという思いで受験する方も増えています。

リユース業界ではまだ資格が少ない中、一定の知識を持っている証明として、転職活動でもアピール材料になる資格のひとつです。

GIA（米国宝石学会）/ FGA（英国宝石学協会）

宝石に関する専門性を深めたい場合、GIA（アメリカ宝石学会）やFGA（イギリス宝石学協会）の資格が有力な選択肢となります。
これらの資格は、ジュエリーや高級時計を扱う場面で特に役立ち、正確な鑑別力や専門的な知識を証明するものとして、国内外で高く評価されています。

取得には学習時間や費用がかかりますが、本格的に宝石の鑑定を学びたい方にとっては、将来的なキャリアの土台となります。
ハイブランドのジュエリーや時計を扱う企業では、こうした資格を持つ人材を歓迎しているケースも多くあります。

参照：GIA、日本宝飾クラフト学院

協会基準判定士資格

協会基準判定士資格は、日本流通自主管理協会（AACD）が認定する真贋判定に関する資格です。
ブランド品の正規流通や模倣品の見分け方について、基礎から体系的に学べるカリキュラムとなっており、現場で必要とされる判断力の強化につながります。

この資格を取得していることで、ブランド品を正しく扱える鑑定士としての信頼度が上がり、採用時に有利になることもあります。
中古ブランド市場における模倣品の精巧化が進む今、鑑定の精度を高めるうえでも、実務とあわせて役立つ内容です。

ブランド鑑定士の求人の探し方

ブランド鑑定士を目指して転職活動を進める際には、求人内容だけでなく、自分の希望に合った働き方や企業の方針も丁寧に確認することが大切です。
企業によって仕事内容や待遇、研修体制は大きく異なるため、長く働ける環境を見極める目が求められます。

ブランド買取店やリユースショップをはじめ、オークション会社、EC運営企業など、鑑定士を必要とする場は幅広く存在します。
国内だけでなく、越境ECなど海外市場を視野に入れた企業も増えており、英語や多言語スキルが活かせる場も広がっています。

どんな企業がブランド鑑定士を募集している？

ブランド鑑定士の求人は、買取店やリユース事業を展開する企業を中心に年々増加しています。
中古ブランド市場の拡大にともない、鑑定スキルを持つ人材を確保したいという企業のニーズが高まっており、実店舗での運営に加えて、オンライン販売を行う企業でも広く求められています。

とくに最近では、海外販売やデジタル施策に力を入れる企業が増えており、業界全体として人材の質を重視する傾向が強まっています。
自社ECサイトやフリマアプリを活用した越境販売を行う企業では、語学力やグローバルな視点を持つ人材が歓迎される場面も増えています。

こうした動きにより、鑑定士としての経験や専門知識に加えて、デジタル技術や国際感覚を活かせるスキルも活躍の幅を広げるポイントとなっています。

リユースショップや買取専門店

全国展開しているリユースショップや、地域に根ざした買取専門店では、ブランド品の真贋判定や査定を行う鑑定士の需要が安定しています。
とくに店頭での接客や対面での査定を行う場面が多く、人と接するのが好きな方や、お客様の信頼を大切にできる方には向いている環境です。

未経験者でも、充実した研修制度を通じて知識やスキルを一から身につけやすく、実務を重ねながら着実に成長できるのが特徴です。
安定した業務フローや教育体制が整っており、安心して長く働きたい方にとっては、心強い職場となります。

オークション会社やブランドリセール企業

業者間取引を行うオークション会社や、ブランド品を自社ECサイトやオンラインプラットフォームで販売している企業でも、ブランド鑑定士の採用が進んでいます。
ここでは、高度な真贋判定や相場に基づいた在庫評価が求められる場面が多く、より専門的なスキルを磨きたい方にとって魅力的な選択肢です。

一度に大量の商品を扱うことも多く、精度とスピードの両方が求められるため、鑑定の現場でさらなる経験を積みたい方や、責任あるポジションに就きたい方に適しています。

海外展開を視野に入れた企業

中古ブランド市場は、アジア圏を中心にグローバルに拡大を続けています。
そのため、海外向けに販路を広げている企業では、語学力や国際的な視点を持つ鑑定士のニーズが高まっています。

英語や中国語など、多言語に対応できるスキルや、海外ブランド市場への理解を持つ方は特に歓迎される傾向にあります。
越境ECの業務や海外出張、現地勤務のチャンスがある場合もあり、グローバルに活躍したい方にとっては魅力のある環境です。

求人を探す際のポイント

求人を探すときは、給与や勤務条件だけでなく、その企業がどのような成長環境を用意しているか、将来的なビジョンを持っているかにも注目することが大切です。

リユース業界は、企業ごとに方針や目指す方向が大きく異なります。
だからこそ、自分がどんなキャリアを描きたいのかを明確にし、そのイメージに合った企業を選ぶことが、転職を成功させるうえでの大きなポイントになります。

勤務条件や給与体系をチェック

ランド鑑定士の求人には、月給制、年俸制、インセンティブ制度などさまざまな給与形態があります。
また、勤務時間や休日制度、勤務地の固定・転勤の有無も企業ごとに違うため、自分のライフスタイルに合った条件かをしっかり確認することが大切です。

特に、土日勤務の有無や繁忙期のスケジュールなどは、働き始めてからのギャップにつながりやすいので、事前にチェックしておくと安心です。

研修制度やキャリアパスの有無

未経験からスタートする場合は、入社後の研修制度がしっかり整っているかが大きなポイントになります。
基礎から学べる研修に加え、OJTやマニュアルが充実していれば、スムーズに業務に慣れることができます。

また、キャリアアップの仕組みがあるかどうかも注目したいところです。
鑑定士として経験を積んだ後、バイヤーや教育担当、店舗責任者などにステップアップできる制度が整っていると、将来を見据えた働き方がしやすくなります。

企業の海外展開やデジタル活用状況

越境ECやグローバル展開を行っている企業では、語学力や国際感覚がある人材が歓迎される傾向にあります。
また、SNSを使った集客や、AIを活用した査定支援など、デジタル技術を積極的に取り入れている企業では、今後の成長性にも期待できます。

こうした企業に身を置くことで、鑑定士としてのスキルだけでなく、新たな分野にもチャレンジする機会が広がります。

ブランド鑑定士として長く活躍するには？

ブランド鑑定士として長く活躍するためには、ただ現場経験を積むだけではなく、業界の変化に柔軟に対応する姿勢が重要です。
新しい技術やトレンドを積極的に取り入れ、常に学び続ける姿勢を持つことで、キャリアの可能性が大きく広がります。

近年では、AI査定の導入やオンライン鑑定の普及により、働き方や求められるスキルにも変化が出てきています。
こうした変化に前向きに向き合い、自分の得意分野を見つけていくことが、長く安心して働くための鍵となります。

キャリアパスと将来性

ランド鑑定士として経験を積んだあとは、バイヤーや店舗マネージャー、教育担当など、多彩なキャリアパスが用意されています。
また、海外市場やEC領域への挑戦など、専門性を活かしながら幅広い分野へと活躍の場を広げることも可能です。

自分の得意分野や興味のある領域に応じて進路を選べるのも、この仕事の大きな魅力です。

バイヤーや店舗マネージャーへの昇進

鑑定スキルや相場観を活かして、仕入れを担うバイヤーや、店舗全体を管理するマネージャーにステップアップするケースも多くあります。
バイヤーには市場を見極める分析力が、マネージャーにはチームをまとめる力や数字の管理スキルが求められます。

一人ひとりの強みに応じてキャリアの幅が広がるのが、この仕事のやりがいのひとつです。

海外市場向けのブランド鑑定士としてのキャリア

海外販売や越境ECに力を入れる企業では、グローバル感覚を持つブランド鑑定士が求められています。
英語でのやり取りや、海外ブランドの市場理解が活かせる場も多く、将来的な海外勤務や出張のチャンスも視野に入ります。

国境を越えて活躍したいという方にとっては、大きな可能性のあるフィールドです。

ブランド鑑定士の将来性は？仕事の魅力を解説

デジタル技術の活用と最新トレンド

ブランド鑑定士の仕事は、デジタル技術の進化によって新たなステージへと進んでいます。
AIによる画像解析や、スマートフォンで行うリモート査定など、鑑定の現場に新しい仕組みが次々と登場しています。

こうした技術を活用できる鑑定士は、企業にとっても貴重な存在です。
柔軟に取り入れる力が、これからの時代に必要とされていきます。

AI鑑定技術の導入とその影響

AIによる画像解析やパターン認識の技術を使った真贋判定は、鑑定業務の精度やスピードを高めるうえで大きな役割を果たしています。
たとえば、大手リユース企業では、AIが商品画像からブランド特有の縫製やロゴの配置を自動でチェックし、一次判定を行うシステムを導入しています。
これにより、鑑定士が行う最終チェックまでの時間を短縮し、より多くの商品に対応できるようになりました。

とはいえ、実際の査定現場では、商品の状態や流通背景など、数値だけでは判断しきれない部分も多くあります。
AIに頼るだけでなく、鑑定士自身の目利きや判断力が今もなお求められています。

オンライン査定・リモート鑑定の増加

スマートフォンやパソコンを使って、自宅にいながら査定を受けられるオンライン査定やリモート鑑定のサービスが急速に広がっています。
あるブランド買取サービスでは、顧客がLINEやアプリで商品写真を送ると、鑑定士が画像と情報をもとに査定額を提示する仕組みを採用しています。

こうした仕組みにより、遠方に住むお客様や忙しい方でも気軽にサービスを利用できるようになりました。
鑑定士側も、画面越しの接客スキルや、限られた情報から正確に判断する力が必要になっています。

データ分析を活用した価格設定

ブランド鑑定士の仕事は、真贋判定にとどまりません。
売買データや市場の動きをもとに、適正な価格を設定するスキルも重要です。

たとえば、過去3か月間の販売実績を分析し、特定ブランドのバッグが相場より早く売れる傾向があるとわかった場合、回転率を重視した仕入れと価格調整を行うことで、在庫リスクを抑えながら利益を確保することができます。

このように、データを活用して数字に基づいた判断ができる鑑定士は、現場で信頼される存在になります。

まとめ

ブランド鑑定士は、知識と経験を活かして長く活躍できる専門職です。
資格やスキルをコツコツ積み上げていけば、バイヤーや管理職、さらには海外事業やEC領域へとキャリアの可能性を広げることができます。

未経験からでも挑戦できる環境が整っており、自分に合った働き方を選びながら成長していけるのが、この仕事の魅力です。

これからの働き方を考えながら、自分に合った場所でスキルを育てていくことが、成功への近道です。